空飛ぶお弁当番外編 お弁当映画の傑作 「めぐり逢わせのお弁当」


飛行機の小画面での鑑賞・・・。こんな感じでした




















原題は「ランチ ボックス」。この方がすっきりしてますよね。
飛行機の背もたれについている小さい画面で、字幕なしという苦しい展開の中での鑑賞となりましたが、すばらしい映画でしたよ。

インドのムンバイでは、お弁当のケータリングサービスがあって、アツアツのできたてを配達人たちが自転車や車でバトンタッチしながら、はるばる亭主の職場まで届けているんです。そんな人力ネットワークビジネスの存在にまず驚き。さらに、金属製の弁当箱が、正月のおせちのお重のように4段、5段重ねの多段階ロケット形式で、そこにカレーや野菜、ライスなどが整然と詰められている豪華さに2度目の驚き。届ける労力と内容を考えた場合、ある意味、世界一豪華な弁当かもしれません、インドの弁当は。

夫婦仲が冷えている夫婦の奥さんイラ(ニムラト・カウル)が、祖母の残した秘伝のレシピをもとに腕によりをかけた弁当を作って、けなげにも夫婦仲の巻き返しを図ろうとします。ところが、配達業者のうっかりミスで、そのお愛妻弁当が、定年間際のわびしいやもめ暮らしの中年おじさん、サージャン(イルファーン・カーン)に届いてしまいます。間違いに気づかずに食べてしまったサージャンが、そのあまりのおいしさにお礼を書いた手紙を弁当箱に入れたことから2人の交流が始まって・・・という展開。

フィルムライクな映像がきれいで、役者のみなさんの演技がとてもすばらしい。何せ、映像では絶対に届けられない「味」と「香り」を、しぐさや表情、セリフだけで表現しているんですから。とりわけ、しがないやもめ役のイルファーン・カーンの演技はすばらしく、ふたを開くところから、食べて飲み込んで、それがじんわりと心に広がっていくまでの一連の演技はお見事です。こういうことを言うと身もふたもありませんが、実際のところ、カレーも何も入ってないような弁当箱相手に演技しているとは思えないほどのリアリティーです。


もう一つ、見どころは彼の部下、シャイク(ナワーズッディーン・シッディーキー)の演技です。若く陽気だけれど、生い立ちに影のあるシニカルなキャラを好演しています。甘いだけでない、人生の苦いビターな面もぴりりときいていて、 見終わったあとに余韻を残します。セリフも心に残るものが多いので、見落とさないように。

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